相対性理論 : 「時計は遅れない!」 : 2021年3月
青少年を読者と想定して、相対性理論についての解説書を書いてみました。最初はそれ程、明確な目的があって書き始めたわけではなく、その動機は単純に家族の一人に説明したいと言うものでした。しかし書き始めるとどうしても、物理屋の習癖としてあらゆる角度からの検証をもう一度せざるを得なくなり、実際、関係する全ての式を様々な角度から再度チェックし直しました。
この過程で『地上から見て電車の系の時計が遅れたら、電車の系から見たら地上の系の時計が遅れるはずである』と言う矛盾を再認識しました。これは昔、よく疑問に思ったことでもあり、また考えめぐらしたものでした。しかしこれまで自分が納得する解答は得られませんでした。その言い訳としては、時計の遅れに関しては直接の観測量ではないので、それ程,真面目に考える必要はないと言うものでした。
今回はこの矛盾点を少年にしっかり説明する必要があり、それでローレンツ変換の式を見直しました。この時、即座にこれまでどこで間違えていたのかが明らかになりました。結果として、どの慣性系でも、時計の遅れなどはどこにもないと言う事です。実際、特殊相対論では電車が v で動く時、t 秒後の電車の座標は x=vt ではなく x=γvt となります。この点をきちんと考慮すればどの系でも時計の遅れなどはない事が分かります。いずれにしても、時計の遅れがない事で矛盾点が解決され、話は非常に単純で明快になりました。例えば「双子のパラドックス」などは時計が遅れる事はないので、これは最初からパラドックスではないと言う事です。
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