教科書： 「Symmetry and Its Breaking in Quantum Field Theory」
上記のタイトルの教科書が Nova Science 出版社 から出版されています. (ニュートリノ洋書販売 , Amazon) . この本は場の理論における対称性とその破れについて解説したものです．量子力学および場の理論の初歩的な物理はすべて付録に収録されています．
学部生諸君には少し難しいかと思いますが、量子力学に関連する個所を以下に抜き出したので量子力学を理解するための参考にして欲しいと思います．Schroedinger の波動関数とその方程式を場の理論としての立場から書いているものです．また、Schroedinger 方程式をMaxwell 方程式と対比させながら理解して行くと、物理が面白くなり理解も深くなるものと思います．
なお、この教科書では場の理論における対称性とその破れの問題が主として解説されていますが、その他にも、場の理論における様々な問題点を指摘した教科書となっています．量子場の理論は無限個の自由度を持つ系であるため、正確にそして深く理解する事が大変難しい理論です．これまでの場の理論のなかで、量子電磁力学（QED）における繰り込み理論は、人々が非常に注意深く場の理論を取り扱い、理論を構築し、そしてその理論を吟味し実験と比較してきたため、最も信用できる理論体系となっています．しかしながら、その後に研究されてきた量子色力学、繰り込み群や格子ゲージ理論等におけるこれまでの大方の理論的な取り扱いは、十分な注意深さを持ってなされてきたとは到底言えなくて、多くの問題点を抱えています．基本的には、物理的観測量が何であるかをきちんと検証してなかったり、数学の公式を物理に応用する際の条件のチェックが不十分であったりして、様々な点における物理的な洞察の不十分さがしばしば見受けられます．自発的対称性の破れの問題においては、ほとんど神秘主義的にすら見えるような理論さえも受け入れられてきており、厳しく批判的に物理を理解しようとする事が必ずしも一般的には行われなかったのが実情です．
この教科書では、物理学における「観測量」は何かという点を常に意識しながら、場の理論をできるだけ平易な言葉で書いています．従って、量子力学を正確に理解していればこの本をきちんと理解する事は十分可能であると思います．
この教科書には、場の理論における様々な問題点が書かれています．この本を理解する事により、今後の物理学における問題点や新しいテーマを見つけ出せるものと思います．物理は難しく、地味にじっくりと取り組んではじめて理解されるものです．是非、しっかり読んで量子力学そして場の理論を理解して欲しいと思います．