☆ オンライン授業 : 前期授業料の一部返還
☆ 追記 :「授業料の返還」(私大連の見解) (2020年9月末)
先日、私大連の執行部から『授業料は学位授与を見据えた総合的な経費で、減額・返還の対象ではない』との見解が発表されました。これには驚くと言うよりも呆れてしまいました。大学における執行部の教授陣の大半が研究上では無能であることは良く知られている事実ですが、彼らは高い見識を持っている事が重要な条件となっているはずです。それにしてもこの「見解」はほとんど「教育音痴」そのものですね。もしその大学において学位を与えることが主な目的だとしたら、それは大学における最も重要な資質に欠けている事になります。そしてこの場合、その大学は大学としての存在自体が問われる可能性があると考えられます。大学は若者を育て、成長を促すことが最も重要な任務です。その一定の成長の延長上に学位が与えられる事になっています。「学位」自体は「運転免許証」程度の意味合いしかありません。繰り返しますが、大学では若者を鍛え教育しそして自分で考える力が身につくよう導く事が最も重要な仕事となっています。その意味においては、そもそも大学における教育は国(社会)全体のためであり、個人が授業料を支払うと言う体制自体を考え直す時期に来ているように思われます。
大学における教育においては勿論、単に知識を教える事が主な内容ではありません。例えば、物理学科で量子力学を教える場合、まずは講義により、量子力学の基本的な運動に関して解説します。この解説で量子力学の本質を理解する事は不可能です。その解説を(受験勉強のように)すべて覚えてしまった学生がいたとしてもほとんど意味はなく、恐らくはある種の無意味な試験に合格できる程度です。量子力学を理解するためには量子力学演習の授業を相当、しっかり勉強することが最低条件です。残念ながら、かなり頑張って勉強しても大学4年で量子力学をきちんと理解する事は至難の業です。量子力学の演習問題は大体12回分用意されています。これまでの長い経験では、この問題集を学生が解き始めた場合、大半の学生は8週目頃までは「量子力学が何だかさっぱりわからない」とぼやいています。しかしながら9週目くらいから一部の頑張ってきた学生から「何か、ちょっとだけ量子力学が面白くなってきた」と言うコメントが返ってくる場合が良くみられました。量子力学をほんのちょっと理解するだけでも相当な努力が必要ですが、これは少人数の演習クラスでしかできない事ですね。
対面授業を行わない大学は、どのような言い訳をしようが、授業料の一部または全額の返還は避けられない事であろうと思われます。現在、3割程度の大学が対面授業を行う事を決定していると言われています。しかしどの大学も様々な努力・工夫をしてコロナ禍の影響を最小限に抑え込み、何とか対面授業を再開して欲しいと願っています。コロナ感染症の難しさは病院でさえもクラスターが起こっていると言う事実からも推察されます。従って大学で多少のクラスターが起こる事は避けられないものと思われます。むしろ、そのクラスター発生を必要以上に咎めたり、その大学を風評被害に導くような報道をする事は許されることではありません。この場合、マスコミやそれに関連する報道機関の対応が問題視されるべきだろうと思っています。
☆ オンライン授業 : 前期授業料の一部返還 (2020年6月末)
現在、大半の大学はオンライン授業を行っているようです。前期の授業をすべてこのオンラインで行うとした場合、当然のことながら授業料の返還が必須になると思われます。学生は対面授業を受ける事により、知識や技術を含む総合的なレベル向上を期していて、このために授業料を納入しています。しかしこの観点からすると、オンライン授業は対面授業によるものと比べて目標達成の半分かそれ以下のものとなっているため、これは明らかに契約違反となっています。従ってこれに対応して前期授業料の一部(または全額)を返還する事がどうしても必要であると考えられます。
これまでに大学がブラック企業化している問題が指摘されていますが、今回のコロナ禍の試練は問題をさらに深刻化する事になっています。ブラックの問題は主に大学院生や若手研究者に対する大学側の姿勢と関係していました。しかし現在のコロナ禍による問題はむしろ学部生、特に初年度の学生に対して、大学での学問への姿勢をどう教えるかと言う事に関係しています。従って、事はかなり深刻で今後、どう対処して行けばよいのかわからない程です。現場で悩んでおられる教員も少なからずおられると思いますが、しかしこの数年の状況を見るからには一部の教員が「単位を与えるマシーン」となっていると言われています。従って、この状況を変えなくてはならないと言う強い意識を持っている教員にとっては、難しい状況が続くように思われます。
まずは前期授業料の一部(または全額)の返還を実行する事が先決です。そして対面授業を再開するべきですが、どのように行うかは各大学が工夫をする必要があります。これをしないと一定数の学生が大学に戻らない可能性があり、さらには戻っても学問的な後れを取り戻せないか、または回復に予想をはるかに超えた時間が掛かる可能性があるものと考えられます。
☆ 「教育音痴」 : コロナ禍と教育 (2020年5月)
コロナ禍で様々な問題が噴出していますが、その中で最も深刻な問題が教育に対する無頓着(無関心)さですね。大半の政治家がかなりひどい「教育音痴」であり、これ程までに「教育音痴」の政治家が増殖していたとは考えてもいませんでした。日本の首相や都知事を始めとして、ほとんどの政治家は教育に無関心としか言いようがないほどに教育音痴の面々で、これには衝撃を受けています。この都知事は確かに頭の切れる政治家のように見受けられますが、人を育てると言う最も重要な概念が希薄に見えますね。これでは、大学が深刻な問題を抱えていても解決の可能性が見えてくるはずがありません。人を育てる事が日本における生命線であることは今も昔も変わりないはずですが、どうしてこうなってしまったのでしょうか?あるいは「日本の技術力」に対する「根拠の無い自信」が驕りや過信になってしまったのでしょうか?尤も「政治音痴」の自分が政治政策や政治家の優劣を議論する気は毛頭ありませんので、この議論は教育に限ってのお話となっています。
このコロナ感染状況の中で、緊急事態宣言がどこまで必要であったかと言う問題は今後の検証に任せる事にしたいと思います。しかしどのような事態であっても、教育を持続する事が最も重要であることは言うまでもありません。何としても学校の休校は避けなければならないと考える事が出発点であったはずです。現在、感染を避ける最も重要なことは「ボディコンタクトの回避」と「マスク着用」です。これを拡大解釈して「3密」などと言ってひっくるめてしまう事が問題を大きくしてきました。マスクをしてボディコンタクトを避ける限り、感染が起こることはまずあり得ません。そしてそれができない場所が「家庭」、「ライブハウス」、「夜の接待」そして「病院」などなどでした。それと複数人での食事は確かに、このマスク着用の原則に矛盾してしまいます。従って、教育現場では給食をどう食べるかと言う問題をしっかり解決する必要はあります。しかし「ボディコンタクトの回避」と「マスク着用」を実行する限り、学校で感染拡大が起こる可能性は極めて小さいものと言えます。
コロナウィルスが西欧諸国で爆発的に感染拡大した主な理由は明らかで、彼らの生活習慣に依っていました。最も重要な点が前述しましたように「ボディコンタクトの回避」と「マスク着用」です。このウィルスは感染してから発症する前後が最も強い感染源になっている事が明らかになっています。従って、自覚症状のない感染者が友人と握手するとかなりの確率で相手に感染させてしまう事になります。実際、このボディコンタクト(握手)による感染拡大が重要な要素の一つである事は確かなことです。このため、欧米諸国においては、先日の論評でも「どうしたら握手以外の挨拶が可能か?」と言う問題を特集していました。自分もドイツなどに6年間滞在しましたが、この握手の習慣は昔、最も印象に残ったものでした。それをやめる事が彼らに取ってどれ程、深刻で大変であるか少しわかる気がします。
また、マスク嫌いもかなり徹底しています。マスクは確かに煩わしいし、これを着けたくない気持ちもよくわかります。しかし無自覚の感染者が感染のソースターム(感染源)になっている事実を見る限り、マスク着用はどうしても必須な事だと考えられます。しかしドイツでは10日ほど前に初めて、公でのマスク着用を義務付けました。しかしこれは明らかに遅すぎますね。オーストラリアでは感染の拡大が欧米諸国とは異なっていて、日本よりもさらに少ない感染者数となっています。この理由は勿論、色々あるとは思いますが、恐らくは昨年秋の「森林火災」と関係しているものと思います。彼らは深刻な森林火災による「ヘイズ」の問題で随分、苦しみましたが、その場合マスク着用は必須でした。その意味でも、オーストラリアにおいてはマスク着用に対してアレルギーはなかったものと考えられます。しかしこの国での「ボディコンタクトの回避」の問題は良くわかりません。
今後、最も深刻な問題となるのは諸外国からの帰国者そして外国人訪問者をどう取り扱って行くべきなのかと言う事でしょうね。感染のソースタームをどれだけ少なくする事ができるかが問題です。ご存知のように、4月に入って都市部での感染者が急増しました。そしてこの主な理由が3月20日ごろから3月末にかけて「欧米(特に米国)」から多くの日本人が一時帰国された事と関係しています。この帰国者のうち一定の割合で感染者が存在していたため、彼らがソースタームになりました。このため、東京や大阪、札幌と言った大都市での感染が急増したものと考えられています。今後、入国者全員にPCR検査や抗体検査を行う体制を整える必要はあるかも知れませんが、この辺の問題は今後の課題となるものと思います。
コロナ禍後の教育問題を主に議論してきましたが、経済の活性化の問題も当然、重要ですね。自分にはよくわかりせんが、しかし直感的には、日本の経済を活性化するためには外国人の訪問者を増やすことが必須のように思われます。Global 化した世界経済を逆方向に戻す事は難しいものと思われます。
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