卒業生の皆様へ : ダニエル太郎選手の変貌 (2025年9月)



    先日、ATP 250 の大会でダニエル太郎選手が準々決勝まで進みました。彼の試合を久し振りで見る事が出来ましたが、そのプレーの変貌ぶりに吃驚してこの小ノートを書き始めた次第です。
    試合のダイジェストを見て、太郎選手のフォアハンドがこれまでよりもさらに腰の回転をしっかり使った打ち方になっていて、これには感心しました。また、バックハンドのスライスもまずまずのレベルのボールを打っていました。その上、ドロップショットなどの小技も使い、実際、それらも結構、うまくできていました。それで一体、何が起こったのだろうかと思ったものです。しかし、これならば確かに試合巧者で勝負強い選手になってくる可能性があると感じています。これまでの太郎選手に一番、欠けていた部分ですね。
    まずフォアハンドですが、今回見た太郎選手のフォアハンドはこれまで以上に腰の回転をしっかり使ったものになっています。このため、ボールの回転量も相当、増しています。そして、腰の回転がしっかり入ったフォアハンドなので、見た目以上に重いボールになっているものと思っています。また、トップスピンロブを何気なく打っていた事がありましたが、さすがにこれには吃驚しましたね。
    また、バックハンドのスライスに関しても、ボールの回転量もかなり多くまずまずのボールを打てていました。但し、バックハンドのスライスではボールをもう少し後ろ(closed stance)で叩く必要があります。今回見る限りでは、ボールを少し前(open stance)で捉え過ぎていると感じました。いずれにしても、今後はバックハンドスライスを試合のラリーの中でどのように使って行くかと言う事が重要なテーマになろうかと思われます。つまりはスライスを逃げの一手としてではなく、攻めの手段の一つとしてどう使って行くかと言う事ですね。
    試合に勝てる重要な条件がサーブキープですが、彼のサーブは明らかに良くなりました。特に、ヘッドの先の回転が速くなり、このためスピンがしっかり掛かったサーブになっていると思います。それとサーブのコントロールが昔と比べて格段に良くなっています。特にアドサイドからセンターに打ち込んだサーブは非常に良いボールでした。彼のサーブ力がさらに磨かれ安定して行けば、今後の活躍が非常に楽しみになりますね。


    今後の太郎選手の課題として、恐らくはフォアハンドを打つ時の『タメ』をもう少しきちんと作ると言う事でしょうか?今の打ち方だと、相手にコースを読まれる可能性が少しあるように思われます。従って、ボール2個分程、引き付けて打つと言う事が大切であろうと考えられます。これはかなり高度な技術だと思いますが、今の太郎選手ならば技術的に十分可能であると思っています。そしてうまくタメが作れると相手の動きも良く見えるようになってくる事は間違いない事ですね。


    家内との会話では、太郎選手の事を『太郎ちゃん』と呼んでいますが、これは我々が長い間、太郎選手のファンであった事と関係しています。二十歳前後で ATP に出てきた頃から、才能は非常に豊かで将来、相当強くなると思っていたものです。しかしながら、これまでは期待された程の結果は出せてはいなかったと思われます。勿論、これには様々な原因があろうかと思いますが、こればかりは自分には分かりません。
    しかしながら、30歳過ぎてから成長してテニスの技術が上達したら、それは最高に楽しい事ですね。自分も50歳過ぎてから、物理が少しわかり始めたので、年を取ってからの上達が非常に重要であると言う事は良く分かっています。尤も、普通のセンスからしたら、30歳はまだまだ若い年齢でもありますが、しかしトップレベルのテニスでは30歳を超えるとベテランの部類となりますね。


















    卒業生の皆様へ : ダニエル太郎選手の快進撃 (2022年1月)



    全豪オープンでダニエル太郎選手が何とマレーを破って3回戦に進みました。この試合を見ていて、太郎選手は完全に変貌を遂げたと感じました。フォアもバックもほぼ一番高い所を打点としていました。さらにはライジングで打っている場合もしばしば見られて本当にレベルアップしたなと思いましたね。サーブに関してもスピードだけではなく、コントロール重視の姿勢が見られました。これまでの太郎選手では考えられないテニスのスタイルを貫いていましたが、これはやはり練習を相当しっかりやったと言う事でしょうね。その裏付けがないと、こういうテニスはできないと思います。それにしてもこれだけ大きく変わることが出来るのは、この選手が持っている才能の豊かさなのだろうとしみじみと感じた次第です。


    特にフォアのストロークが良くなりました。体の回転をしっかり使った打ち方をマスターされたようで、ボールの軌道が安定していました。今後、さらに成長して行くためには常に何か基礎的な新しい技術の習得を心掛けて行く事が必要となっています。それが何であるかは太郎選手本人が自分で考えて行く事になるわけですが、例えば、ナダルが時に打つような、強いスピンを掛けたボールを取り入れる事もその一つの可能性かと思われます。しかしこの場合、下手をすると手首を壊してしまうので、これは難しい技術だと思っています。
    残念ながら、太郎選手の快進撃も3回戦で止まりました。これは相手が若手の有望株で、今、乗りに乗っている選手であるため、これは負けても仕方がないと思っていました。しかし太郎選手に取ってはこれが本当の意味での出発点に立ったと言う事だと思います。これからはますます基礎練習をしっかりと行って欲しいものですが、しかし同時に怪我をしない体を常に作って行く事も非常に重要ですね。


    大坂なおみ選手も3回戦で敗退しましたが、これは相手選手の問題と言うよりも、本人の単純な練習不足が主な原因ですね。大坂選手のコーチが色々と作戦を練って練習メニューを作成していると報道されていましたが、しかしながらこの練習の方向性はずれています。これは本当に残念な事ですが、大坂選手が足りないのは基礎練習です。何か新しい技術を取り入れようとしながらの、徹底した基礎練習を実行する事によってのみ、彼女が再び高いレベルを取り戻すことができます。実際、どの分野においても、これが高いレベルをキープする唯一の方法です。その基礎練習が楽しいと思えなかったら、それは大坂選手がテニスには向いていなかったと言う事です。
    しかしこの基礎的なトレーニングに関しては、学問ではさらに顕著です。もしトップレベルの研究を続けようとするならば、常に物理学の基礎的な勉強を繰り返し繰り返し行う事は絶対的な必要条件です。これをしっかり行わない限り、前に進むことは不可能な事です。最近の研究者の多くが、この基礎的なトレーニングを怠っていると言われています。これは非常に心配な事ですが『物理が飯よりも好き』と言う研究者が今は絶滅危惧種になっていると言う事なのでしょうか?




    参考資料 : 

    [特別版] ☆   2018年12月  : 「サーブが改良された!」 

    錦織選手のサーブについてコメントをしてきましたが、その目的はほぼ達成されたようなので、ここで彼のサーブに関する問題点の指摘は終了とします。ATPファイナルズやドリームマッチでのサーブを見る限り、かなり改善されています。トスを上げた後にボールを打つタイミングもかなり良くなっています。これをしっかり続けて行けば相当、コントロールのよいサーブが継続的に打てるようになると思われます。後は、メンタルな部分ですね。しかしこれはコーチに限らず、誰も教えることは出来ないと思います。テニスでメンタル面を本当に強くしたかったら、それはテニス技術に関する理論をしっかり理解することが最も重要です。しかしさらにそれに加えて、テニス以外の様々な知識と教養を身につけることもメンタルの強化には非常に重要です。そしてこのことはどの専門分野においても共通の重要事項となっています。


    日本の若手テニスプレーヤーでなかなか面白い選手の一人にダニエル太郎選手がいます。彼の才能を見る限り、トップテンに入ってもおかしくないものを持っていますが、彼はその才能の半分も使っていないように見受けられます。 (そう言えば理工学部の学生の中にも「才能は豊かだがそれを使っていない」型の学生が結構、いましたね・・・。) 例えば、太郎選手のサーブですが、今年の夏までの彼のサーブに関しては、相手にコースを読まれやすいフォームになっていました。これは彼のトスと関係しています。トスが高すぎて、ボールがかなり落ちてきた場所でボールを叩いていました。トスで上げられたボールの最高位置と太郎選手がボールを叩く位置との差が大きすぎたと言うことです。これは錦織選手のサーブの場合の差よりもさらに大きいものでした。これだと、下向きの速度ベクトルの影響が無視できないレベルで、これでは安定したサーブキープは難しいであろうと思っていました。ところが、先日、ドリームマッチで見た限りでは、この点に関しては相当に改善されているように見受けられました。従ってもしこれが本当に自分のものになって行けば、今後の彼のサーブは相当、期待できると思っています。サーブはコントロールが最も重要であることは明らかですね。
    それで、太郎選手がシングルスで勝つためにはどこの部分の改善が最も重要でしょうか?それは明らかで、彼のストロークでの欠点はボールを落としすぎて打っている事です。これは本人が自覚されているかどうかわかりませんが、ボールを叩く時の打点の高さに関係しています。彼がボールを打つ時、そのバウンドしたボールの最高地点では打たないで、むしろ落とし過ぎて打っている場合が多く見られます。これは彼がこれまで主にベースライから相当下がって打つ手法を基本にして試合に臨んできた事と関係していると思われます。従って彼の場合、まずはライジング気味でしっかりボールを打つ方法を自分のものにする必要があります。そしてそれを実行しない限り新しい方向に踏み出すことは難しいと思われます。逆に、それをうまく自分のものにできれば新しい展開が開けてくる事は確実なことです。ちなみに、ボールをライジングで打っても強いスピンは十分かかります。この場合、ラケットの握りを厚くして、ラケットのテンションを弱め(40ポンド前後)にして、ボールを『水平に非常に強く叩く』ことが必要です。そうすればボールに強烈な順回転スピンがかかり、しかし運動量は保存しているためボールは真っ直ぐ飛び、ベースラインの直前にはしっかり落下してくれると思います。力学的な解説は小ノート  「テニスの上達法」 に入れてあります。















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