卒業生の皆様へ : 木下晴結選手の技術力 (2026年3月)
今年の『島津全日本室内テニス選手権』では木下晴結選手の実力が光りましたね。特に、サーブが格段に良くなっていました。結構、強いサーブが打てていてこれにはかなり驚いています。実際、手首の使い方が予想以上にうまくなっているため、ファーストサーブのスピードも女子選手としてまずまずのレベルと言えるし、セカンドサーブも結構、スピンが効いた良いサーブとなっています。今後、筋力アップに成功すればさらに強いサーブが打てるものと期待できます。後はコントロールの精度を上げる事ですが、勿論、これは誰に取っても一番難しい事なので時間が掛かるかも知れませんね。
晴結選手のフォアハンドは女子選手の中でも特に優れています。スピードと言い、スピンの掛け方と言いこれはトップレベルの選手にそれ程、引けを取らないレベルになっています。まだコントロールがそれ程、精度が高いとは言えないのでこの点は今後の課題ですね。それとサービスリターンにおいて、まだ引き出しが少な過ぎるように見受けられます。
しかし残念ながらバックハンド(ダブルハンド)は『ダメボール』がかなり多いように見受けられます。この場合、ヘッドの周りが十分ではない状態でボールを叩いてしまうため、打った後にはストレートかまたは相手コートの真中あたりにボールが行くケースが多くなっています。もしバックハンドでストレートに打ちたい場合、かなりクローズドスタンスで打つか、またはボールをさらに引き込んで打たない限り、強いボールを打つ事は来ません。恐らくは左手の使い方の問題であろうと思われますが、応急措置としてはバックハンドを打つ場合必ず順クロスのボールを打ち返す事にしてみることでしょうか?
もし右手中心でバックハンドを打ちたい場合、彼女の場合は片手バックをマスターした方が良いボールが打てる可能性が高いと思われます。片手バックの場合、ラケットを引いて構える時に手首をうまく使って引けば、割合簡単に強いボールが打てることは間違いないものですね。後はラケットヘッドを下げて(これはダブルハンドでも同じ)またラケットの握りをフォアハンドの場合の真逆にする事でしょうか?
バックハンドのスライスもオープンスタンスで打っているので力が伝わっていません。これは必ず、クローズドスタンスで打つと言う練習を徹底して行う必要があります。しかしボールの捉え方は上手なので割合、すぐにスライスはマスターされると思います。
いずれにしても晴結選手の才能は非常に豊かであり、今後、ライジングショットの精度を上げるなどの課題を克服して積み重なる努力を続けて行けば、恐らくはトップ10に駆け上がる事も夢ではないと思っています。現在の女子テニス界ではパワーのある選手が上位にいます。しかし昔から『柔能く剛を制す』と言われているように、技術力を高めて頭を使ったテニスを実行して行けば必ず道が開けてくるものと考えています。
上記の大会でベスト8が出そろった時に晴結選手の動画がネットにアップされましたが、それを見た事からこの稿を書き始めた次第です。そして結果的に予想通り晴結選手が優勝しましたね。サーブにしてもフォアハンドにしてもかなりレベルが高くて驚いたものでしたが、これは勿論、本人の才能と努力の結果である事は間違いありません。しかし同時に、彼女にアドバイスしているコーチがテニスの理論をかなりきちんと分かっている人のように見受けられますが、どうでしょうか。
☆☆ サーブトスの力学 [2025年3月末] ☆☆
ここではトスを高く上げて、その落ちてきたボールを打ってサーブする場合、どのくらいサーブの落下地点(今の場合、ネット上を通過する位置)に影響が出て来るかと言う力学を簡単に計算して見ました。ここではトスの最高地点から約50 cm 落下したボールを叩く場合を検証します。真空中だと50 cm 落下したボールの下向きの速度は約 3.1 m/s です。しかし空気の抵抗がテニスボールにはかなりあるため、この速度は真空中の場合の3分の1とします。すなわち、ボールを打つ時の下向きの速度は V= 1 m/s とします。ここでサーブを打つ場合の初速度は 100 km/h だとしましょう。これは約 28 m/s に対応します。この場合、下向きにずれるわけですが、そのずれ方は角度で表すことができ、これは今の場合、約 0.036 rad となります。この時、ベースラインからネットまで約 12 m なので、下向きの速度の影響としては、そのボールの軌道は最高地点を叩いた場合と比べて、ネット上で約 43 cm 程度下方になっている事がわかります。
実際のサーブの軌道に関しては、空気抵抗と重力の影響が無視できないものです。さらにスピンの影響が非常に大きいため、ここで行った評価(計算)は大雑把には参考にする事ができると言う程度です。正確な数値を求めるためには膨大な計算が必要であり、ここでは行っていません。しかしかなり大きな影響である事は間違いない事ですね。このため高くボールを上げて、その落下したボールを打つ選手はどうしても微調整をせざるを得ない事になっています。従って、この場合サーブコントロールに難が出てしまいます。当然ですが、サーブで最も重要な事はそのコントロールの精度ですね。
ちなみに、落下したボールの速度がサーブの速度に加わるため、少しサーブの速度が増すのではないかと考える選手がいるかも知れませんね。しかし残念ながらこの場合、速度の増加は在りません。具体的には、サーブの速度が 28 m/s で落下速度が 1 m/s の場合、加算された速度が 28.02 m/s になるだけのことで、これはサーブ速度は変わらないと言う事に対応しています。
☆☆ ディミトロフのスライス [2024年3月末] ☆☆
マイアミオープンでの準決勝でディミトロフ選手がズべレフ選手を破りましたね。この試合、両者ともにサーブもよく、またストローク戦でも白熱した試合が続きました。結果はほんのちょっとの差でディミトロフ選手が勝ちましたが、どちらが勝っても不思議ではない非常に良い試合だったと思います。その中で、やはりディミトロフ選手のバックハンドのスライスが光りましたね。これがディフェンス力を上げている一つの原因かと思われます。しかもディミトロフ選手のスライスは回転量が非常に多くて、返球するだけでもかなり大変なレベルであろうと思っています。勿論、プロではこのレベルの回転量は普通であると思いますが、これでベースライン付近に返球されたら、それをチャンスボールとして打つことはほぼ不可能であろうと思われます。彼の片手バックも安定しているし、ボールの質が高いですね。いずれにしても、この強いスピンを掛けたスライスの習得がディフェンス力強化の一つの方向であろうと思っています。
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