☆ 岡目八目 : ワクチンと基礎医学 (2021年3月)
現在、ワクチン開発の問題が重要になっています。コロナの感染拡大を抑え込まないとオリンピック開催が難しい事は明らかですね。そのためにはワクチン接種以外に、現在の感染状況を改善する方法は見当たらないと思われます。少なくとも With Corona などと言っている限り、感染を抑え込むことは極めて難しいものと考えられます。無症状または発症する2日前の感染者が他者にウィルスを移してしまうような感染症はこれまでに経験した事のないものです。これを「外力」なしに抑え込む事は到底、不可能な事ですし、この感染症の深刻さは昨年の春からすでに分かっていた事です。しかしながら、日本におけるワクチンの開発はひどく遅れています。何故でしょうか?
この事は近年(この20年ほど)、日本における基礎科学に対する国のサポートが減少し続けてきた結果、現在、ほとんど絶望的なレベルになっている事と密接に関係しています。「日本の科学は深刻な低迷期」のところで簡単には解説していますが、これはしばらく前に日本の首相とその参謀が実行してしまった「聖域なき構造改革」と言う名の下の愚策が原点となっています。すなわち『大学も病院も一定の基本的な予算以外は、各自が「外部資金」を獲得する事により研究費などに充てる事』と言う、ほとんど気が狂ったような提言でした。現実に、それが実行されてきたため、日本の基礎科学は絶滅の危機に瀕しています。
コロナ禍に関しても、今回、これまでの日本の感染者数はドイツの2割程度、米国の2%程度でしたが、それでも病院の医者も看護師も明らかに不足していて、彼らは大変過酷な労働を強いられていると言われています。何故でしょうか?これはテレビでも報道されていますが「病院に対する無意味な合理化を強要してきた国の施策が根本にある」と考えられています。しかし病院において、今すぐに何かを変えようとしてもそれは不可能な事です。基礎科学に対して、地味ではあっても継続的なサポートが重要である事と同じ意味合いですね。
基礎科学は一見役に立たないように見えるかも知れませんが、しかしこれはすべての科学技術の基礎になっています。そしてこの学問分野は、当然ですが極めて重要です。基礎科学においては、その進歩状況は目に見えないものです。現在、そうした基礎科学に対して国がしっかりとサポートをする政策に早急に回帰する必要があり、これは日本に取って最も重要な緊急事案となっています。このままだと日本の基礎科学だけではなく科学技術すべてにおいていずれ世界から取り残されてしまいます。そして、そのレベルを回復しようと努力しても、もはや手遅れになってしまいます。あるいはすでに難しい状況になっているかも知れませんが・・・・・。
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