卒業生の皆様へ : 日本の科学は深刻な低迷期 (2018年8月)
日本の科学(特に物理学)は現在、低迷期に入っていて、それは悲惨なほどに悪い状態となっています。この主な原因としては二つの要因が考えられると思います。第一番目としては、大方の科学者が感じている事と思われますが、15,6年前に日本の首相とその参謀が遂行してしまった「大学や病院も競争原理の中にあるべき」と言う途方もない愚策にあります。当時、これは大学や病院にとっていずれ大変な事になると強く感じたものでしたが、それがすでに現実となっています。自然科学者は自然現象をより深く理解するため日夜、努力していますが、この場合、第一線で研究している研究者にとって、競争原理などあり得ない考え方です。競争競争と主張する学者がいたとしたら、彼は二流以下のぼんくら教授であることは確かな事です。優れた学者がどんなに頑張っても、学問はほんの少ししか進歩しないものですが、これはまともな研究者には誰でもわかっている事です。それを競争原理などと言って論文を沢山書く事が競争に勝つ事だと考えてしまう愚かな人達が、日本の科学政策を左右したとしたらどうなるでしょうか?その結果は知れていて、そしてそれが現在の状況を生み出す一因になってしまいました。直ちに、この最悪な政策を停止して昔のゆったりしたものに戻して行かないと大変な事になります。すでに深刻な状況になっていてどれだけ回復できるか分かりませんが、それにしてこの提言をした参謀の責任は非常に重いものですね。
第二番目の要因としては若手の育成を怠り、科研費としてお金をばら撒いて来た科学行政そのものにあると言えます。現在、「優秀な科学者(又は研究機関)」と認定された人達が多大な研究費を獲得しています。ところが、この人達はポスドクとして沢山の若手を雇っているのですが、しかし彼らは有能な若手研究者を育てているわけではありません。研究費としての予算がおりているのですが、しかし若手を任期なしの常勤職として雇う予算はないと言うシステムなので、育てようとしても育てられないのが現状です。実は、彼らが若手を育てる実力があるとは到底、考えられないのが現実問題としてあります。しかしそれは別としても、現在、若手は労働者として使い捨てになっていることは良く知られている事実です。このため、次世代を担う若手を育てられない状況が続いており、日本の科学の進歩は大幅に遅れてしまう事になっています。
ただし、物理学に関して言えば、米国を始めとして西欧諸国はさらに悪い状況が続いていて、今後、状況が好転してゆく可能性は少ないものと考えられます。特に米国の大学では「年齢による差別は違法」であると言うとんでもない事がまかり通っています。このため大学教授には基本的に定年で辞めさせることは出来ないシステムになっています。これは何を意味しているか明らかですね。全体として見れば、若い人が職を取る可能性を制限してしまっていると言う事です。この様な馬鹿げた事を続けている米国では、これまで実績をあげた外国人研究者を移民させてしのいできましたが、それを継続し続ける事は無理な話です。さらに現実問題として、実績を上げた研究者が本物の実力を備えている可能性は非常に小さいものです。つまり、大半は偶然ショットでよい仕事が出来たということです。その上、実力がある研究者は極めて少数なため、米国の現在の物理においては絶望的に低レベルになっています。例えば重力波の実験探索にかかわっている人達が数百人もいますが、しかし彼らは重力波が何なのか全く分かっていません。これは一般相対論の波動方程式が予言しているからだと信じきり、その一般相対論は因果律を破り自己矛盾している事など考えても見ません。さらに、これはそもそも自然を理解しようとした方程式ではないので物理の基礎方程式ではなく、宇宙論以外でこの方程式が使われる事はありません。
一方、日本では既得権者がはばを利かせていて、このため若手が活躍できる場所が非常に限られているのが現状です。しかしこの状況を打ち破る事は不可能に近く、あきらめムードになってしまいます。どの組織においても、一度、既得権を持つと、例えば理事長に居座り続けたり、無能である事が明らかでも教授職を辞めることはあり得ないのが実状です。しかしながら、いくら現状を批判してもそれがなかなか変わらない事は読者諸氏もよくわかっている事ですね。
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