卒業生の皆様へ : 若手テニス選手の将来性 (2024年11月)
先日、日本で行われたATPチャレンジャーの大会で清水悠太選手が優勝し、またITFワールド・テニス・ツアーでは伊藤あおい選手が優勝しました。これはお二人に取ってトップ100に入る大きなステップになるものと思われます。
清水悠太選手は小柄ではあっても俊敏さが際立っており、また全身がバネのようで、このためサーブ力もかなり高いレベルであると思います。そしてバックハンドの切れ味も良く、将来性豊かな選手だと感じています。そう言えば20年以上も昔、理工テニス部の No.1 の選手で同じような体のバネがある選手がいましたね。彼も小柄でしたが試合にも非常に強くて、めったに負けない選手でした。自分が乱打した学生のなかでは断トツで強烈なスピンが掛かったフォアハンドを打っていました。
清水悠太選手の場合、今後、彼が負ける経験を如何に生かして行くかと言う事であろうと思われます。テニス技術の観点から見る限り、大きな欠点は見受けられませんでした。尤も、この選手が簡単に負けてしまうような相手との試合をまだ見ていないので、それを見てみないと本当の弱点はわからないとも言えますね。
今後、さらに高いレベルでのサービスキープをして行く必要があります。この場合、最も重要になるのはセカンドサーブです。このためにはセカンドサーブの跳ね方をもっと多様にして行く事が重要であろうと思われます。この場合、手首の強化とラケットの握りの工夫がポイントになるかと思います。
伊藤あおい選手は比較的変則的なテニスをされていますが、非常に視野の広い選手ですね。これだけ状況判断を的確に行う事ができる選手はプロでも稀であろうと思われます。また色々なショットを自在に繰り出す事が出来ていて、見ていて確かに面白いテニスをされています。
しかし、重要な課題があります。現時点でのフォアハンドではスピードも不足しているし、回転量はさらに少ないレベルですね。従って、このフォアハンドの強化が重要ですが、これは簡単ではないものと推察しています。ボールタッチは絶妙ですが、スピードと強い回転の掛かったフォアハンドが打てると言う選択肢を持たないと世界のトップで活躍する事は難しいと思われます [ テニスの上達法] 参照。
それと、外野席から見る限りにおいて、彼女のサーブは肩の回りが十分とは言えないものと見受けられます。この場合、野球の選手(コーチ)に投げ方を教えてもらうのが一番の早道かと思われますが、どうでしょうか?しかし手首の使い方は上手だし、うまく修正できればかなりしっかりしたサーブを打てる可能性がありますね。
☆☆ サーブトスの力学 ☆☆
ここではトスを高く上げて、その落ちてきたボールを打ってサーブする場合、どのくらいサーブの落下地点(今の場合、ネット上を通過する位置)に影響が出て来るかと言う力学を簡単に計算して見ました。ここではトスの最高地点から約50 cm 落下したボールを叩く場合を検証します。真空中だと50 cm 落下したボールの下向きの速度は約 3.1 m/s です。しかし空気の抵抗がテニスボールにはかなりあるため、この速度は真空中の場合の3分の1とします。すなわち、ボールを打つ時の下向きの速度は V= 1 m/s とします。ここでサーブを打つ場合の初速度は 100 km/h だとしましょう。これは約 28 m/s に対応します。この場合、下向きにずれるわけですが、そのずれ方は角度で表すことができ、これは今の場合、約 0.036 rad となります。この時、ベースラインからネットまで約 12 m なので、下向きの速度の影響としては、そのボールの軌道は最高地点を叩いた場合と比べて、ネット上で約 43 cm 程度下方になっている事がわかります。
実際のサーブの軌道に関しては、空気抵抗と重力の影響が無視できないものです。さらにスピンの影響が非常に大きいため、ここで行った評価(計算)は大雑把には参考にする事ができると言う程度です。正確な数値を求めるためには膨大な計算が必要であり、ここでは行っていません。しかしかなり大きな影響である事は間違いない事ですね。このため高くボールを上げて、その落下したボールを打つ選手はどうしても微調整をせざるを得ない事になっています。従って、この場合サーブコントロールに難が出てしまいます。当然ですが、サーブで最も重要な事はそのコントロールの精度ですね。
ちなみに、落下したボールの速度がサーブの速度に加わるため、少しサーブの速度が増すのではないかと考える選手がいるかも知れませんね。しかし残念ながらこの場合、速度の増加は在りません。具体的には、サーブの速度が 28 m/s で落下速度が 1 m/s の場合、加算された速度が 28.02 m/s になるだけのことで、これはサーブ速度は変わらないと言う事に対応しています。
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