時代遅れな宇宙論のCG映像 (2022年10月) : 『付記 newly revised! 2023.12』
これまで、マスメディア(特にNHK)が宇宙論に関連したブラックホールなどのCG映像を流し続けています。それで最近、これらのCG映像に関する様々な疑問・質問が寄せられています。このため、この疑問・質問への回答として、この小ノートを書いています。但し、このノートの内容は一般論の議論が主なため、これは疑問・質問への具体的な回答としては不十分なものとなっています。
実は、これらのCG映像の内容はかなり時代遅れのものなのですが、しかし編集者達はそれには全く気がついてはいないものと思われます。さらに、このCG映像で扱っている宇宙論は物理学とは無関係です。もう少し専門的な言葉で言えば、物理学は粒子(質点)の運動を扱う事が出来る非常に有用な理論体系ですが、時空とかその次元などと言う問題は物理学の対象外であり、これは『取扱い不能』となっています。従って、CG 映像で描いているお話は物理の言葉で解説する事は不可能なものとなっています。
恐らく、これらのCG映像は一般相対論を基にして議論を展開しているものと考えられます。しかしながら、このアインシュタイン方程式の未知変数である計量テンソルは重力場 φ とは無関係であることが現在、証明されています。従って、一般相対論は自然界を記述する理論模型とはなっていません。しかし、あるいはそれ故に、この計量テンソルが何を意味しているのかはいまだ不明のままとなっています。現在、計量テンソルに関して明確になっている点としては、これが座標に依ってしまった場合、一般相対論の理論模型は最も重要な相対性原理を破っていると言う事実です。詳しい解説は [ 宇宙の夜明け ] [ 相対性理論の解説 ] [ 何故、一般相対論は無意味か? ] を参照して頂ければと思います。
ここで特に問題となっているのは、NHKの科学番組編集者もこのCG映像を監修している物理学者も、その内容が時代遅れの宇宙論であることを認識してはいないと考えられる事です。物理学者の方は別にしても、科学番組の編集者は科学の世界において、何が正しいものかと言う事を的確に判断できるセンスが必要です。例えば、芸術ではその作品がどの程度の価値があるかと言う評価をする事ができる人はそれ程、稀な存在ではありません。しかしその作品を作成するには専門的な技術と特別な才能を必要としているため、これは誰にでもできると言う事ではありません。この事は学問でも基本的には同じことですね。視聴者や専門家が理解不能だと感じているようなCG映像を科学番組として放映しているのは、その番組の編集者が物理の理論模型を的確に評価するセンスに欠けていると言う事を示唆しています。
現実問題としては NHK の編集者だけではなく、例えば日経新聞の科学記事の編集者も相当ピント外れの記事を載せています [ 科学記事編集者の責任 ]。これは若者の科学教育と言う観点ではかなり深刻な問題となっていますが、どうにもやり様がありませんね。編集者は確かに専門家の意見または論文を掲載するだけで、その内容にどれだけ責任が伴うのかと言う問題は難しいものであろうと思っています。しかし、例えばアメリカの物理専門誌である Physical Review D の編集者達が新しい物理を全く理解できていなかったため、この30年間深刻な問題を引き起こしてきました。結局、彼らの無能さが現代素粒子論の崩壊を加速させ、ソフトランディングができなかった一つの原因であるとも考えられます。
それで、これらのCG映像が時代遅れであると言う事を理解してもらうために、その物理の教授達に物理学の基礎に関する口頭試問の試験問題を解いてもらいたいと思います。大学の教授になってしまうと、彼等は物理の知識とその理解度を第三者から試験されることはありません。これは普段、勉強を続けている学者には勿論、その様な試験を行う必要はありませんが、今はやむを得ない事態となっていることを了承して頂ければと思います。いずれにしても、この試験問題をきちんと解く力があれば、『一般相対論の問題点』を正確に理解できるものと思われます。逆に言えば、この基本的な問題(易しいとは言えないが!)を独力で解くことができない場合、彼等は物理学におけるマスコミ教授の看板を下ろす必要があります。実際、こうした基礎的な問題を解くと言うトレーニングを怠ると知識だけの『幽霊学者』になってしまいます。現在の大学において、この『幽霊学者』が予想以上に増加しているのではないかと危惧していますが、どうでしょうか?
[注] 幽霊学者 : ここでは中身が乏しく、足が地についていない学者と言う意味合いで使っています。それ以上の意味は特にありません。小ノート 『 東大授業料値上げ? 』参照。
なお、基礎物理学に関しては『よろず物理研究所』( よろず研 ) において若手研究者が動画などにより、丁寧な解説をしていますので、参考にして頂ければと思います。
ここで口頭試問の試験内容を書いて置きます。関係している物理の教授達は独力で解いてみる事が必須です。但し、あらかじめ参考文献を読んでおくことは良しとします。試験時間(計算に必要とする時間)は8時間とします。なお、TEX 版はこちら( 試験問題 )から見る事がきます。
(a) 基礎物理学に関する設問 : 古典力学
(1) 質量 m の惑星の運動を記述する Newton 方程式において、
重力ポテンシャルに加えて、付加ポテンシャルが存在する場合を考察しよう。
ここで全ポテンシャルが
U(r) =-G (Mm/r) + (α/ r^2)
と表せられる場合を考えてみよう。但し、M は太陽質量である。
この時、付加ポテンシャル (α/ r^2) は非可積分である。
(i) Newton 方程式の厳密解を求めなさい。
(ii) その軌道に不連続性が現われる事を示しなさい。
(2) 非可積分ポテンシャルは摂動的に解く必要がある。
(i) 摂動論による解を求めなさい。
(ii) その軌道の近日点がどうなっているか説明しなさい。
(b) 基礎物理学に関する設問 : 電磁気学
(1) Poynting ベクトルの物理的な性質を述べなさい。
(2) Poynting ベクトルと電磁波(フォトン)は関係があると思うか?
(i) 「ある」と答えた場合、その理由を述べなさい。
(ii) 「ない」と答えた場合、その物理的根拠を説明しなさい。
(3) 電磁場の量子化が何故、必要なのかその物理的な理由を述べなさい。
(4) Dirac 場の量子化は反交換関係で行う。その物理的な根拠を説明しなさい。
(5) 自由フォトンの運動方程式は ∂μ F^{μ,ν} =0 である。
ここで F^{μ,ν} は電磁場の強さを表している。
この時、ベクトルポテンシャル A^μ は4個の自由度があるが、
フォトンは2個である。何故、自由度が2個減少したのか、
その理由を説明しなさい。
(c) アインシュタイン方程式の右辺に関する設問:
(1) 状態関数が Ψ(x) の時、粒子のエネルギー・運動量テンソル T^{μ,ν} を書きなさい。
(2) 古典力学の場合、粒子のエネルギー・運動量テンソル T^{μ,ν} は定義できていない。その理由を説明しなさい。
(3) アインシュタイン方程式の場合、古典力学なのに何故、エネルギー・運動量テンソル T^{μ,ν} が作られたのか答えなさい。
(4) 星の形成とその分布関数の決定に関する設問。
(i) これらはどのような相互作用によって決められているのか説明しなさい。
(ii) またそれらの相互作用の特徴を説明しなさい。
(iii) 星の形成ではどの相互作用がどのような役割を果たしているのか説明しなさい。
(iv) 星の分布を決めるのはどの相互作用がどのように影響するのか説明しなさい。
(5) ブラックホール(黒い穴)は星としては定義されていない。何故、人々はそれを星だと思い込んだのか説明しなさい。
[付記] : 何故、一般相対論は無意味か? [2023年12月]
現在、一般相対論が何故,物理的には無意味な理論であるかと言う事が厳密に証明されています。これは Einstein 方程式は数学的に間違っていると言うわけではありませんが、しかし物理的には無意味な方程式であると言う事の証明です。小ノート 『 何故、一般相対論は無意味か? 』を参考にしていただければと思います。
結局、これまで現代物理学の最も重要な命題は『新しい重力理論が場の理論的に作ることができるか?』と言う事に集約されていました。これがあれば、もともと一般相対論は不要でした。新しい重力理論に関しては [教科書 Fundamental Problems in Quantum Field Theory (Bentham Publishers, 2013) ] を参考にして頂ければと思います。
一般相対論のような物理的に意味をなさない理論に多くの人々が振り回されてきた事実は取り返しがつかない程、重いものですね。しかしこれからは前を向いて行くしかありません。この場合、物理を学ぶ時に、実は哲学を学ぶ事も重要であると考えています。特に、研究において、どのような方向に進んで行くべきかと言う事を模索している時に、哲学的な思考法は重要な指標を与えてくれることがしばしばある事は間違いない事です。詳しい事はここでは触れませんが、最近出版された 『恣意性の哲学』(四方一偈著、扶桑社新書476) が少し参考になるかも知れません。この本は物理とは直接の関係はありませんが、私の最も親しい人が書いた本なのでここに挙げておきます。若手研究者は時間を見つけて是非、読んで頂きたいと思います。
[記:この哲学書の著者 (兄・圭一) は令和6年4月初めに他界]
[付記 S]:積み重なる努力 [2024年1月]
現代においても、才能ある若者がその才能をあまり発揮できていない場合がよく見られています。これは才能はあっても、実際には環境とか運とかタイミングがかみ合わなかったりして、その才能をうまく開花できていないと言うことですね。それではこの場合、その才能を発揮してさらに伸ばして行くためにどうしたらよいのでしょうか?恐らく最も重要な点は、他の人よりもより多くの『積み重なる努力』を続ける事であろうと考えられます。
それでは、その『積み重なる努力』とはどのようなものなのかが問題となりますね。物理学において、自分の実力をつけるために、物理の教科書(例えば電磁気学)を何回も読んでそれをほとんど覚えてしまうような、そう言う努力をしたとしましょう。ところが、この努力は大学において試験の点数を稼ぐには効果があるかも知れませんが、残念ながらこれは積み重なっては行かないものとなっています。教科書を覚える事をしても、これは物理の基礎トレーニングにはなっていないからですね。一方において、例えば電磁気学の演習問題を執拗に解きまくると言う事を実行して行くと、これは物理における積み重なる努力に対応しています。但し、これは途方もなく時間が掛かってしまうし、また非常にタフな作業となっています。従ってこの演習問題を解くと言う基礎トレーニングを効率よく行う必要があります。それは、人が持っている時間(人生)は有限であり、そのハードな作業を一定の時間内にやり遂げる必要があるからですね。従って、この作業を実行して自分の実力をある期間内に向上させる事ができるかどうかが重要なポイントとなっています。そして、これができるかどうかも一つの(別個な)才能と言えるものかも知れませんね。
[Addition] :
There is an interesting article in Guardian. [Overweight neutron star defies a black hole theory. ]
[ Guardian ]. This may present a new insight into the study of "Nucleus of Galaxy" which may well be a giant neutron star.
[fffujita@gmail.com]