何故、若手研究者が減少しているのか? (2019年8月)
☆ 「若手育成と定年延長」 : 現在、30歳代の若手研究者のうちで、大学や研究所で常勤職が取れている割合が昔と比べてかなり減少していると言われています。何故でしょうか?これは実は単純な数字合わせと関係しています。これまで長い間、大学の教授の定年が55歳から60歳まででしたが、近年、それを65歳に延長しました。そのこと自体は特に問題となる事案ではありません。ところが、これは60歳を超えて5年間、若手の就職を妨げている事になっています。これは実はかなり大きな数値であり、その分、30歳で職を取れるはずの若手が35歳まで待つ必要があるという事になっています。
現在の状況は予想を超えて深刻です。それは若い研究者が育ちにくい環境のため、要領の良い研究者が職を取り、実力はあっても上とうまく行かない若手研究者が研究者としての道をあきらめるケースが続出していると言われています。この場合、これは何とかしなくてはならないのですが、どうしたら良いのでしょうか?
☆ 実はこれは割合、簡単な事です。それは「60歳で給料を半額にしてその残り半額で若手を雇う」というものです。すなわち、60歳ー65歳の間の給料はこれまでの半分とし、しかしその雇用形態自体は変わらないとするものです。これは国立大学、私立大学そして研究所を問わずにすべて平等に行われるべきものです。但し、実行するためには「法令」で決めるしか可能性はありません。このような問題を大学または研究所の判断で個別に決める事は不可能です。既得権者である教授会がこれを承認する可能性は極めて低いからです。
勿論、研究することが最大の喜びとしている学者は当然、これを受け入れるものと思います。しかし現在、半数以上の学者は研究主体とは程遠い状態であると言われています。さらに大学で権力を握っている学者の大半が研究上では無能であることは周知の事実です。その意味で若手を育てる必要を感じている場合、これは大学外部から規則を決めて行くしか他に方法はありません。いずれにしても「定年」で職を辞す事の恐怖の大半は給料ではありません。これは定年になった途端、その居場所を失う事の恐怖であると言われています。その意味においても、この方法しかこの国の科学の実力を保持する方法はありません。
一方において、科学者のレベルが著しく低下しているとよく言われています。しかしそれにもかかわらず、それらの研究室は依然として何事もなかったかのように存続しています。一般的には「ある組織において無能な人が半数を超えるとその組織は崩壊する」と昔からよく言われている事です。しかしここで言う崩壊とは内部崩壊の意味で使われています。従って外部からはほとんど何もわからない状態となっています。この場合、例えばそれが大学ならば悪影響を受けるのは学生のみと言う事になっています。これは、恐らくはその組織を外部評価する機能がうまく働いていない事を意味しています。実際、例えば大学の外部評価は実質、行われていませんがこれは大学の自治と言う隠れ蓑とも関係しているものと思われます。しかし最低限の条件が満たされていない大学に自治を語る資格は勿論、ありません。
近年、科研費などの国の研究費を一部の「有名(?)科学者達」がそのかなりの部分を独占的に獲得していると言う事実は深刻な問題を惹き起こしています。この科学者達は自分の研究ばかりに忙しくて若手を育てるどころか、彼ら若手を研究労働者として酷使している事が知られているからです。前にも書きましたが、例えば「ノーベル賞」を授与された科学者達や東大・京大などの教授職を得た人達にとって最も重要なことは若手を育てることでなければなりません。しかし現実にはそれとは程遠い状態となっています。何故でしょうか?
☆ 「考えられる理由の一つ」として、彼らには本当の実力がないため、若手を育てる事が現実問題としてほとんど出来ていないというものです。若手を教育して育てる事は非常に大変なことです。そしてこれは真の実力がないと不可能なことなのです。ところが「何とか賞」に値する仕事とは、基本的に偶然ショットによるものがほとんどです。従ってこれらの事より、彼らに科研費などの研究費を特別に与える必要はなく、彼らを研究費の面で特別扱いしてはいけない事に対応しています。その場合、むしろ彼らが若手を育成する仕事に専念するような環境を作ることが最も大切であると考えられます。
参考 : ( 日本の科学研究の凋落 )
[fffujita@gmail.com]
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